舞台は人類初の月面都市「アルテミス」。溶岩洞窟を利用して建設されたこの都市には、富裕層の観光客から出稼ぎ労働者まで、様々な人間が暮らしている。
主人公のジャズ・バシャラはサウジアラビア出身の若い女性で、宇宙飛行士の父のもとで育ちアルテミスに移り住んだ。現在は配達員として働きながら、巨額の借金をなんとか返そうともがいている。
ある日、ジャズは大金を得られるとある依頼を引き受けてしまう。それが思わぬ大事件へとつながっていく——。
同じ著者の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とは雰囲気がかなり違う。あちらが孤独な戦いと感動の物語なら、こちらはスリリングな犯罪エンタメという感じ。テンポよく、サクサク読める。
月面都市の設定の細かさはさすがアンディ・ウィアーで、酸素管理、重力、施設の構造など、生活の細部がリアルに描かれている。「月ってこんな感じなのかも」という没入感を味わえる。
主人公ジャズのキャラクターがとにかく面白い。口が悪くて自業自得な部分もあるのに、なぜか応援したくなる。読み終わって損はない作品。